冥府からの手招き

処暑も過ぎ、朝夕には秋の匂いがするようになってきたけれど
まだまだ8月ということで、夏らしく怪談の戯曲を観に。


シス・カンパニー公演 『怪談 牡丹燈籠』 @Bunkamura シアターコクーン
   〔作〕 大西信行
  〔演出〕 いのうえひでのり
  〔出演〕 段田安則/伊藤 蘭/秋山菜津子千葉哲也瑛太/柴本 幸
       梅沢昌代/大河内 浩/松澤一之/市川しんぺー西尾まり
       保坂エマ/粕谷吉洋/森本健介





日本三大怪談*1の中でも一番艶があり、ロマンティックな部分がもともとあるお話ですが
美意識の高い演出と相まって、とても幻想的で艶やかな舞台でした。


廻り舞台を利用してセットの角度や位置を変えたり、動いたままにしていたりしたから
舞台上は一つの場面でも、客席のどの位置にいるかでそれぞれ違う画が見えていたと思うので
個々の印象もさまざまだったのではないでしょうか。
ライティングと映像のミックスが浮世離れしている感じを創り出し
慈愛と悲哀の溶け合ったようなヴォカリーズが印象的なメインテーマが流れると
冥府と現の境にある水面にさざ波が立っているように感じた。


軽く見得を切るところや、追いかけ捕まえるときの表現などに歌舞伎の要素が入ったり
森本さん演じる三遊亭圓朝の高座をストーリーテリングに使ったりと、古典芸能も織り込まれていて
お囃子や三味線、拍子木の音や衣装、台詞回しなどと共に色々な「和」が混ざり合う。



舞台上にいるのは、演者それぞれの固有名詞ではなく、役そのもの。
観ている間は、誰々が演じているという思考が過ぎらなかった。
作品に体温と息遣いを与える役者という人たちはすごいな、と改めて思うと同時に
物語の世界をつくり、円滑に進めるために動いているスタッフの方々にも敬意を表して
かなりしっかりと心から拍手を送って帰って来ました。

*1:あとの二つは、「四谷怪談」 「皿屋敷