逗子の海とアコースティック


獅子座で新月を迎えた夜。
(厳密には3時間半のライブの真ん中あたりぐらいだったけどね)


行ってみたいなぁ、と思っていた音霊。 今年で5周年だそう。
都内からは遠いのと、興味あるアーティストは平日出演ばかりだったから二の足を踏んでいたけど
今回は、また暫く聴けないであろう中田くんのソロと
バンド名義ではない時の光村くんはどういうステージをするのだろう、と
興味をそそるブッキングが非常に魅力的だったのでようやく行ってきた。



「響鳴」 音霊 OTODAMA SEA STUDIO
 〔ACT〕
   田中和将 with 高野勲 from GRAPEVINE
   中田裕二 from 椿屋四重奏
   光村龍哉 from NICO Touches the Walls
   LUNKHEAD



逗子海岸の入口を入ってすぐ、目の前を歩いていた人の後姿が光村くんに似ているなぁ…
と思ったら、ご本人でした(笑)
そしたら光村くんだけでなく、古村くん、YANCYさん、
この日は出演しなかったけど小寺さん、安高さん、貴樹…とフツーに浜辺にいて
写真やサイン、握手に応じたり話したりしてファンサービスもしっかりしていたねぇ。
ファンに囲まれる前の小寺さんを発見したとき、小袋菓子をもくもくと食べていたよ。 らしいなぁ(笑) 
どんなに好きなアーティストでも、握手やサイン等に対しての欲求が何故か沸かない私なのだけど
その光景を遠巻きにビールを飲みながら眺めているのは面白かった。
みんな、気のいいお兄さん的な対応をしていて微笑ましかったし
彼らを知らない海水浴客たちは、「女の子たちがすごい集っているけど、有名人?」と
不思議そうにチラチラと伺っているのも何だか可笑しかったわ。


音霊のスタッフさんは手際よく捌いていくので、会場への入場もスムーズ。


会場内は時折風が入ってくるけれど冷房はないから、完全に日が落ちるまでは蒸し暑い。
でも、かすかに聞こえる波音とステージで奏でられている音が混ざったときに
この場所でライブを聴く最大の魅力を味わえるので、こういうのもたまにはいいね。


以下、出演順に。



中田裕二

4月のSONG COMPOSITE@duo以来で聴く、中田くんとYANCYさんだけのアコースティック編成。
シャドーボーダーの黒Tシャツを着た首元には黒い細めの巻物
グレーのソフト帽という出で立ちでステージに一人現れ
「歌謡曲カヴァーをやりますが、まずはバンドの宣伝させてください」と、《シンデレラ》を弾き語り。
この曲だけじゃないけど椿屋の曲はほんと、その場の空気をガラッと変える色彩が強いわ。
曲だけじゃなく、中田くんの声もだけど。
で、その衣装、正解(笑)
君は首元の開きは狭いスタイルが体型に合うから、Tシャツも巻物ありのほうがベター。
海辺ライブだからとラフにはせずに、カジュアルながらもきちんと衣装感を出したところもすごくいい。
どこでやろうと、ステージは非日常だからね。その姿勢は大事ですもの。
その後は、黒タンクトップに膝丈パンツ、ストローハットを被ったYANCYさんとともに。
《モンローウォーク》の<ブロンズ色の肌>と歌うところで中田くんがYANCYさんを指さししたけど
ほんとにこんがりといい色に焼けていらっしゃる。対比で、中田くんがなんだか色白に見えたよ。
シーサイドver.で、という中田くんのフリに
ちょっと困ったような笑みをしたYANCYさんのovertureで始まった《恋わずらい》
そして次は、夏といえばサザン!ということで《いとしのエリー
この発想は、この後に出るNICO・光村くんと被ってしまったけれど(曲は被らず。光村くんのところ参照
私は、中田くんと光村くんの二人は似ている部分が多いと感じているので、実は嬉しかったり。
桑田さんの歌い方の印象が強いせいもあり、中田くんが歌うサザンは新鮮。
真似っぽくなることもなく、彼自身の表現で歌っていてよかった。
カサブランカ・ダンディ》でラスト。
この曲は東京のコンポジでは演奏していなかったので聴けて嬉しい。
男性は女性よりも、もともと精神的に弱い生き物なのは承知だけど
弱さを隠し本気で女性に夢を見させる男性が少ないのは、時代がキツイからなのかもなぁ…
なんて思いながら聴いていました。


歌詞をメロディにただ乗せるだけでなく、しっかりと固定させ
ステージと客席の境から音を走らせるイメージが聴きながら浮かんだのは
聴衆ときちんと対峙していると感じたからかな。
だからか、お客さんもちゃんと応えていたし
トップバッターとして、しっかりと空気を暖めていた。
5曲と短かった割には、終演後も頭の中を音と曲が廻っていたのは満足できる濃さだった証拠だと思う。


LUNKHEAD

バンド名表記だからフルメンバーかと思いきや
この日は小高さん(Vo&Gt)と山下さん(Gt&cho)のお二人だけのステージ。
バンド名だけは知っていたけれど、失礼ながら曲もお姿も全く存じ上げずでした。
椿屋とは昔よくライブで一緒になっていて、この日は楽屋が中田くんと同じだったうえに
光村くんのサポートで出る野間さんが参加していたバンドとも同じく一緒になることがあったから
同窓会みたいな感じです、と云っていた。
こういうエピソードってなんかいいね。
小高さんの縦横に大きく動く口の形に目がいくことが多かったのだけど
「い」を云うような形で横に引っ張ったときに出る声の奥行きがいい感じだなぁ、と思った。
山下さんが東○神起のメンバーに似ていると思ったのは私だけかしら(笑)
スワヒリ語で「子供」という意味の《トット》という曲前MCで
客席にいた子供が泣いていたので、その子の未来にと演奏し、終わったら子供は泣き止んでいた。
その子に伝わったみたいでホンワカした気持ちになったな。
いや、たぶん伝わったんだと思う。


光村龍哉

まずは一人弾き語りで《あいたいきもち》
ライブでは初めて聴いたかな。
デビュー前に、音霊の前身である海音(KANNON)の頃に出演オファーはあったのだけど
今回、ようやく出演することができて嬉しいと云っていた。
その後は、NICO・古村くんとサポート鍵盤の野間康介さんを呼び込み三人で。
「洋モノやります」と、デヴィッド・ボウイの《Lady Stardust》を。
グラムも聞くんだねぇ。
選曲するだろうなと予想ができたサザンのカヴァーは《夏をあきらめて》
光村くんが中田くんのところに挨拶へ行ったら、発想が被ったことに関して謝られたそうで(笑)
上記(中田くんのところ)でも出したけど、二人は似ている部分多いいのだから
これを機に仲良くなっていただきたいなぁ。超個人的願望。
ちなみに、楽器は違うけれど、小寺さんと古村くんは同じ専門学校出身だしね。
二本のギターとキーボードだけの《THE BUNGY》、すごく新鮮。
古村くんのアコギの音が出ないトラブルがあり、途中からエレキに持ち替えるまで
三分の二ぐらいは光村くんのアコギ一本と野間さんのキーボードの音だけだったのに
勢いのある曲というのもあるだろうけれど、音が薄くなることもなく線も太かった。
最初、ノリを出すために力んだのか少し荒くはなっていたけれど。
そして、ラストは《エトランジェ》
ミニマムセットのアンサンブルでも音源のようなセピア色をイメージさせる雰囲気はあって
バンドセットとは別の柔らかい空気感もあり。
古村くんと野間さんの音づくりや演奏のバランスがよいからかな。


スタンドにマイクつけたままでもギターを持たずに歌う光村くんを見れたのはレアだね。
時々、弦を押えるような仕草をしていたのは身体に染み付いたものだろうけど
小さくエアギターしていたのが何だか落ち着かないからみたいで初々しい。
今回ので、光村くんにも表現方法としての「ハンドマイク」という選択肢も見えたし
いつかまたこのスタイルを他でも見る事ができる気がする。


田中和将 with 高野勲

髪の毛もじゃもじゃな二人なので、Pファンクバンドのパーラメントっぽい語感で
このユニット名は「パーマネント」だそう(笑)
田中さんは途中からワイン飲みながら、楽しそうに歌い、ギターを弾く。
そのリラックス感ある雰囲気はとても余裕があっていいのだけど
そこから奏でられる音はその場にいる聴衆と対峙しているとは感じられない。
実は、AX@3月で初めてバインのライブを聴いたときも同じことを思っていた。
(長田さんのコーナーはそうは思わなかったので別として。)
聴いてくれる人がいる意味がないステージとしか感じなかった。
音が、言葉が、曲を届ける意識が聴衆へ向けられておらず、ステージ上だけで完結されてしまう。
自分の音に関してナルシシズムがある人はこれに陥る傾向が往々にしてあるが
誤解を恐れずに言えば、自慰行為と変わらない。
自信や自負はあったほうがいいけれど、自己陶酔が深いのは枠を狭める原因になりかねないよ。
今回はカヴァー曲もあったのにそう感じたのは決定打でした。
おそらく私には彼らとの感性の共通項がないのでしょう。
音楽に限らず正解のない芸術で、感性が合い、響くかどうかは判断材料の中でも重要ですから。
唯一の救いは、最後に田中さんに可愛がってもらっている光村くんが呼ばれて一曲演奏したことかな。
私が光村くんを贔屓にしているということを除いても、このセッションしかこちら側へ降りてこなかった。
あと、中田くんとも一緒に演奏したかったと云ってくれたことは嬉しかったし、聴いてみたい気もあるけど。
なので、奏でられているものに対して記すことが無いのが残念だ。