シンプリー・カラス
『修練と勇気。それ以外はゴミ』
これは20世紀最高のソプラノ歌手と云われた
マリア・カラスが、歌うことに関して大事なことは?と 問われた時のことば。
ちょうど、没後30年にあたる命日に開催された
【マリア・カラス 30thメモリアル 映像・コンサート&トークショー】
の招待が当たったので行ってきた。
コンサートはミラノ在住のソプラノ歌手・鈴木慶江さん。
トークショーはピアノ伴奏もされるオペラ研究家の岸純信さんが進行役を勤め、
日本で唯一マリア・カラスを演じたことがある黒柳徹子さん、
幼少時よりマリア・カラスを聴き続けている華道家・假屋崎省吾さん、
そして前述の鈴木慶江さん。
黒柳さんの生マシンガン・トーク、すごかった(笑)
あれは、口挟めないな〜(苦笑)
でも、マリア・カラスを演じるにあたり、いろいろとカラスについて勉強されたそうで、
様々なエピソードをお話してくださって面白かった。
『私は、 この音 を出しています。
この音 以外、なにものでもない音を。』
譜面どおりの音を正確に、しかも作曲者の意図するニュアンスまでも
しっかりと表現したと云われるマリア・カラス。
本来なら、身体という楽器をつかって奏でる歌で表現するには不向きな音並びがあるのですが、
それさえも忠実に表現したそう。
だから、前述のようなコメントを残している。
カラスは音楽を専門に学んだ訳でないのに加え、
それまでの歌に集中(指揮者の方をみて歌う)オペラ歌手たちとは一線を画し、
オペラに初めて歌以外の表現(演技)を持ち込んだ人なのだそう。
だから、賞賛する人と批判する人の割合は50/50だったよう。
カラス自身も、観客の半分以上は敵と思って舞台に立っていたそう。
批判的な聴衆が終演後に「負けました」と思わせるような歌を歌うようにしていたカラス。
だから、ベストな状態を保てそうにないときは舞台をキャンセルしたりして
ワガママというレッテルも貼られていたようだけれど、
『聴いている人に届くか。
そして、聴いている人の心に残せるか』
を第一に考えていたからこそなのかも。
体重が108kgあったが、一年間で50kgもの減量に成功したり、
日常会話に音楽以外の話題が少なかったということや
自分のレッスンが終わっても毎回他人のレッスンを5時間以上見学したりというエピソードなどもある。
自分に厳しかったカラスだからこその哲学で“世紀最高のソプラノ”という賞賛を手に入れ、
今なおファンを魅了してやまない。
さすがに冒頭の「それ以外はゴミ」というくだりは賛同できないけど、
怠け者の私にはカラスの残した言葉たちが非常に痛かった・・・
そんな二時間でした。
もちっと自分に厳しくせんといけんな。ふむ。