映画@2月

カポーティ

監督:ベネット・ミラー
ティファニーで朝食を」で人気作家になったトールマン・カポーティ
1959年カンザス州でおきた一家殺害事件に興味をもち、取材をはじめる。
犯人の一人に“何か”を感じ、入れ込むカポーティ
そして、この事件を「冷血」というノンフィクション小説として執筆しだすが、
犯人に近づきすぎた故の苦悩が彼を追いつめる。
冷血なのは犯人か、カポーティか。


本編通して、ちょっと灰色がかった押えた色調で寒々しい。
おそらく、“冷血”を意識してのことなのかな。
実際の著書の執筆工程に関わる、作者の心情が描かれているが
「冷血」は読んだことないので、これを機に映画を思い出しながら読もうと思う。


カポーティを演じたフィリップ・シーモア・ホフマン
仕草や喋り方、声の高さなどをカポーティ本人とそっくりにしていたそう。
残念ながら、カポーティ本人を私は知らないから何ともいえないけれど
他の映画(例えば、「MI:?」とか)でのホフマンとは全く違っていたので、
多分そっくりなんだろうな。
ゆえに、ホフマンはこの役でアカデミー賞の最優秀主演男優賞を受賞したしね。


劇中、犯人と自分を
「僕と彼(犯人)は同じ家で育ったけれど、
彼は裏のドアから、僕は正面玄関から出て行ったようなもの」
と表している。
多分、同じ“匂い”を感じたのだろうな。
ちょっとの違いだけで立場が全く違うことになったけど。


「冷血」は最高傑作として世間に迎え入れられたが、
その後、カポーティは一冊も書き上げることなく亡くなったそう。
おそらく、その後も長引くような衝撃的な経験だったのだろう。
映画として観たこちらでさえも、衝撃的だったから。


◆キンキーブーツ

監督のジュリアン・ジャロルドはイギリスのTV界で活躍されている方だそう。
実話に基づく物語。
急逝した父親から受け継いだ倒産寸前の靴工場社長・チャーリー。
優柔不断ながらも売却話に屈せず存続の為に頭を悩ませる。
トランスジェンダー*1のドラッグクイーン、ローラと出会い
ドラッグクイーン専用のキンキーブーツ(日本では女王様ブーツ?)を
作る事を思いつき、片田舎の保守的な人々の偏見に遭いながらも奮闘する。
この物語は、偏見を捨て、一人ひとりが持っている個性を尊重し
他人を思いやる気持ちの大切さを表している。とてもハートフル。
ローラのショーも◎!見せ方がよい。サントラほしい。
    
  

フラガール

李相日監督、「69 sixty nine」や「スクラップヘブン」の方なのね。
二つとも見たいと思いながら、まだ観れていないんだよなぁ・・・。
“大ヒット中!”的な宣伝がされている間は、あまり観に行かないので年越してしまった。
周りの評判どおり、いい映画です。確実に泣きます。
常磐ハワイアンセンター(現在、スパリゾートハワイアンズ)建設に伴う実話。
奇抜さなどは狙わず、起承転結から外れないけれど、確実に心に残る物語。
俳優陣も素晴らしい。
手先・足先まで神経が行き届いているダンスも見もの。
さまざまな賞を獲ったのも納得。
  

サムサッカー

マイク・ミルズ監督はデザイン・映像(MV・CM等)・音楽活動・・・等、
様々なアーティスト活動をしている方だそう。多分、作品自体は目にしているんだろうな。
そんな監督の長編初監督作品。


不自由なく、愛情もたっぷりある家庭に暮らすジャスティン・17歳。
この年になっても“サムサッキング”(親指を吸うこと)が恥ずかしいと思いながらも止められない。
自分に自信が持てず、先の見えない未来を不安に思い、止められない癖に悩む。
“年頃の青年の母”“自分の行き方”を模索し切り開いていく母、
癖が治らない息子を愛しているが、どう接していいかわからない父親、
両親の注意が兄に集中するが故、10代前半にも関わらず冷静に状況判断をする弟。
そして、取り巻く人々。皆、未来が不安。どう自分の人生を生きていいかわからない。
紆余曲折しながらも最後にでた答えは、この映画の最大のメッセージ。
『答えのない人生を生き抜く力』


ジャスティンのすごく微妙な心や表情を繊細に演じたルー・プッチ。
ベルリン国際映画祭 銀熊賞・最優秀男優賞を受賞したのも頷ける。

*1:「性別違和」を感じている人の中で、反対の性での生活もしくは、既存の性役割にとらわれない形での生活を望みながらも、形成外科手術までは望まない人