やさしい嘘

↑これと同じ題名の外国映画がありますが… 気にしないでください。



ディア・ドクター 』 原案・脚本・監督: 西川美和



ある山間の村で、”神さま仏さま”よりも住民に慕われていた唯一の医者・伊野が突然失踪した。
そこから明らかになる、嘘。
しかし、それは責められるべき嘘なのか。



優しく、愚かで、弱いのに、時に強くて、傲慢で。でも、愛おしい、人間。
何とも複雑な、それでいて単純な、人間の本質。


キャスティングも絶妙な上に、演者も役と一体になっていて
演者の固有名詞よりも、役のそれや人となりが前に出ているから
登場人物それぞれがちゃんと生身として生きている。


いやぁ…西川監督、またしても素晴らしい作品です。
決して派手さはないけれど、ドラマティック。
けれども、別世界の話のような遠さは全くなく、体温を感じるほどに近い。
僅かな心の動きも的確に描き、観る者にもその機微に触れさせる。
それも、押し付けがましくなく。
まぁ、医師免許無しの医療行為は褒められるものではないけど
医師と患者以前に、人間と人間だということですね。
観終わったあとも、胸の奥に穏やかな熱がじんわりと広がったままでした。


私が観にいった映画館は3スクリーンあるのだけど
そのうち2つのスクリーンを使っているのも納得です。
これはたくさんの人に観てもらいたい。



ところで。
八千草薫さんは、なぜあんなにも可憐なのでしょうか。
お年を召してもなお、凛とした可憐さを失われずにいらっしゃる。


トウキョウソナタ』の時も思ったのだけど
(コレ、感想書いていなかったな…他にも観たのに書いていないの結構あるんだったわ)
ご結婚されてからの井川遥さんは、とても綺麗で色っぽい。見た目も、醸し出している雰囲気も。


余貴美子さんが演じた看護師が
『血まみれのマリアーきんぴか(2)』(浅田次郎 著)に出てくる看護師にダブった。
そして、伊野の仕事を支えながらも、時には尻を叩いて前に進ませたり
適正な状況をつくったりコントロールをしたりする、懐が深く、頭がいいこの役柄が
映画や演劇の世界での余さんのようにも思えた。
主役はもちろん、物語さえも支えているような。それでいて、しっかりと印象に残る。
こなす役柄も幅広い方ですし。


このお三方、年代は違えど、それぞれの艶やかさがあって素敵。