映画@10月
◆キサラギ
監督:佐藤祐市 「古畑任三郎」
原作・脚本:古沢良太 「ALWAYS 三丁目の夕日」
自殺したD級(!)アイドル・如月ミキの一周忌に集まったファン5人。
ファンならではのコレクションや話をするために集まったが、「もし、ミキが自殺じゃなく誰かに殺されたとしたら」 という一言からストーリーは二転三転・・・いや・・・回数がわからないぐらい展開する、ワンシチュエーション・コメディ。
笑いはもちろん、ミステリーあり、涙あり で、最後はじわぁっと心が温かくなる。
おもしろいです!おススメです!
「古畑〜」の謎解きテンポと「ALWAYS〜」の性善説的感動を足して、俳優陣の演技で割ったような感じ。
…しかし、香川照之さんってすごい役者だ。
◆ボルベール –帰郷-
監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
「オール・アバウト・マイ・マザー」「トーク・トゥ・ハー」に続く、女性讃歌3部作最終章。
「オール・アバウト〜」、観てないんだよなぁ。観たい。
「トーク〜」よかったし、今回も観てるから是非3部作全て観てみたい。
スペイン語って、私にはすごく耳馴染みがいい言語。
英語を聞くより心地いいんだよな。
女性は結婚をすると、“女” “娘” “母” の役割をこなさなければならない。
“娘”として忘れたい過去や、“母”として守るべきこと、“女”として生きる喜びと苦労。
そして、人として・・・。
出てくる女性、みんな素敵。 色彩豊かな画。
女性には是非観てほしい。
ペネロペ・クルスがギターに合わせて歌うシーンは、上手いとか下手とかを超越したものが迫ってきて鳥肌たった。
役に入り込んでいるから、あのような歌が歌えたんだろうな。
人の心に直接届く歌。
ペネロペって私と同い年じゃなかったっけ・・・雲泥の差だわ〜(汗)
◆M
監督:廣木隆一 「ヴァイブレータ」
原作:馳 星周 「不夜城」
廣木監督の近年の作品(「ヴァイブレータ」以降)は何作か観てる。
なぜなら、大森南朋さんや田口トモロヲさんが出ているからなんだけど(笑)
廣木監督は女性を題材に描くことが圧倒的に多い。
R-15指定に引っかかる画やストーリーも多い。
でも、ピンク映画とは違う。ましてや、AVみたいな軽さなんてないし。
まぁ、それ目当てで観に来る男性もいるだろうけど。
女性自身が認識していない、女性の中の不安定な部分を描き出す。
廣木監督の映画は、自分と照らし合わせながら共感したり反発したりしてしまう。
好き嫌いがハッキリ分かれる監督だから、詳しい内容は割愛。
◆神童
言葉を覚えるより先にピアノが弾けた神童、うた。
落ちこぼれ音大生、ワオ。
人同士が共鳴しあい、心を通わせていく音楽シネマ。
「大丈夫。あたしは音楽だから」
なんか、すごい言葉。
うたの演奏吹き替えをした和久井冬麦さんは、劇中の設定年齢よりも一つ下の12歳ぐらいでこの演奏しているのに驚き。
ワオの演奏吹き替えは「のだめカンタービレ」で玉木宏さんの吹き替えもした清塚信也さんだそう。(テレビないのでもちろん、のだめは見れていませーん)
ピアノが主体の映画なのに、声のみで構成されているハトリミホさんの音楽がところどころで入るのも面白い。
◆赤い文化住宅の初子
監督・脚本:タナダユキ 「さくらん」(脚本) 「タカダワタル的」
原作(漫画):松田弘子
フォークシンガー 故・高田渡さんを追ったドキュメンタリー「タカダワタル的」を見て、タナダさんの作品に興味を持った。なんだか人肌が伝わってくる感じだった。
この映画をみて、自分の状況を人と比べてはいけないな と改めて思った。
借金だけ残して蒸発した父。
その借金を返すために働き尽くめで亡くなってしまった母。
母を喪って高校へ行くことも出来ず、働かざるをえなくなった兄。
経済的困難という自分の境遇を受け入れしっかりと生きている中学生の初子。
貧しいなかでも心の支えになっているのは、彼氏とのおとぎ話のような約束。
その一縷の光を胸に毎日を送っている健気な初子を見ていると、この歳でもナイモノねだりをしている自分に問いたくなる。いいのか?と。
努力だけではどうにもならない物事を受け入れ、それを踏まえて「今」を生きていく。
経済的理由で高校へ進学することはおろか、日々の食事にもままならない初子の救いは前述の約束と、兄という家族の存在と母との思い出、普通だったら親御さんから文句がきそうな言動の担任。
この担任の奔放さが何回か初子を救う。この担任は物語にところどころ”抜け”をつくる。いいスパイス。
物語はちょい重たい題材だけど、タナダ監督特有の温度が最後まであって観終わっても気分は重くならない。
初子と彼氏の約束が果たされるといいな と本気で思った。