映画@6月

ドリームガールズ

 監督・脚本: ビル・コンドン

遅ればせながら観てきた〜。
始めから終わりまで、歌のシーンがある度にゾクゾクッ!
画面の割り方とか上手いな〜 と思っていいたら
この監督さん、映画「CHICAGO」の脚本を書かれた方なのですね。
「CHICAGO」のときも、キャサリン・ゼタ=ジョーンズレニー・ゼルウィガーのシーンに惚れ惚れしちゃったっけ。
脚本を書かれる方は、書いている時点で“画”をイメージしているだろうから、監督と兼任すると思い描いたとおりの“画”がだせるのだろうと思う。

個人的に、エディ・マーフィが苦手なのだけど、この映画のは大丈夫だった。

『Ray』でレイ・チャールズを演じた印象が深い、ジェイミー・フォックスは役柄上、今回あまりきっちりと歌うシーンがなかったのが残念。

ビヨンセ、綺麗! カリスマ性あるわぁ。
ぶっちゃけ、今までジャケ写やアー写や映像で見ても、綺麗だと思わなかった。(私の感覚おかしいのかも。)
成功→アイラインが強くなる という、どこかで聞いたことある図式そのままのメイクも、衣装に合わせて変わるメイクも見ていて楽しい。もちろん、「Listen」すごかった!

ビヨンセもすごいけど、やはりジェニファー・ハドソンの迫力ある歌は聴き応えある。
話によると、3人の中ではエフィ(ジェニファー)が一番歌の上手い設定だから、ビヨンセは少し下手に歌うようにしたと聞いたことがあるけど、それを差し引いてもあの歌唱力はすごい。
そして、喜怒哀楽の表情が豊か。

他の出演者の歌もそれぞれよくて、「個性」を改めて認識した。

ショーの振り付けやらフォーメーション、衣装とウィッグのバランスとか、舞台に立つことのある人間としては非常に参考になる要素が多かった。

・・・ちょっと、ビヨンセこぼれ話・・・
この映画の撮影が終わってすぐにアルバム製作にとりかからなければならず、猶予は1ヶ月。
数箇所のスタジオへバラバラにプロデューサーを配置し、曲を競い合わせて作ったそう。
“ディーナ”の役柄を引きずったままレコーディングしたビヨンセは、
『Deja Vu』( Beyonce Feat. Jay-Z)に象徴されるように
攻撃的な面が大きくでたアルバムになったと言っていたそう。

魂萌え!

 監督・脚本: 坂本順次    原作: 桐野夏生

定年を迎えた夫が、急逝したことによって
自分の知らなかった夫の秘密があらわになる中、
今までの生き方とは違う道を見つけ、選び、歩んでいく
一人の女性の物語。

妻と愛人が対峙するときに象徴される、「赤」
やはり、「赤」は“女”を表す一番手っ取り早い色なのだ。
最初は妻のほうが劣勢を極めるも、立場の弱い愛人の強がりが崩れるのと対照的に、どんどんと強くなっていくさまは、やはり紙切れ一枚の契約だとしても、“妻”という座は強いのだと思った。

カプセルホテルで数日過ごすうちに巻き込まれた一家族の問題や、海外で好き勝手やっていた長男が遺産相続を催促したり、
何でも相談してといいながらも頼りにならない娘の結婚問題だったり、女学生時代からの仲間との仲に亀裂が入りそうになったりするなか、新しい恋(?)を見つけたりして、忘れかけていた“女”としての生き方を思い出す。


そして、映写技師という仕事に出会い、すべての問題が解決し、自分の足で歩いていく決心をしたときの清々しい表情。
「あなたの秘密を知ったからこそ、新しい人生を歩むことができる」と、心から夫に感謝する。

人生、若くても老いても、道はその人次第。

まぁ、私の場合はまずは結婚ですかねぇ・・・
誰か伴侶になるという奇特な方はいらっしゃいませんか?(笑)

マリー・アントワネット

 監督・脚本: ソフィア・コッポラ

ソフィア・コッポラは「ヴァージン・スーサイズ」や「ロスト・イン・トランスレーション」にみられるように、女性の心の複雑な機微を静かに、そして、しなやかに描く人だと思う。
この作品もそう。
一般的に周知されているアントワネットの物語ではなく、
彼女の視点から描かれた新たな物語。

国同士のために幼くして異国へ嫁いだアントワネットは
プライベートがなく、好奇の目がそこここにある中で
満たされない心を、華やかなことがらで紛らわしていた・・・

念願の子供を授かり、子供中心の生活に変わったアントワネットが本当の彼女であり、一番幸せな日々だったのではないかな。

劇中に出てくる、ドレスや靴、お菓子の数々。カラフルポップ!
そして、ポップさを強調するようなBGM。
このポップさがあるから、後半の落ち着きが引き立つ。

国政の経済的なシワ寄せを受け、怒りを爆発させた民。
ヴェルサイユ宮殿をおわれる馬車のなかでの表情と一言が印象的。

女として、妻として、母として の アントワネット。
女性はいろいろな面があって複雑。
だからこそ、ちょっとやそっとじゃ倒れない。

さくらん

 監督:蜷川実花

安野モヨコ原作の漫画を実写化。
フォトグラファーの蜷川さんをはじめ、
脚本にタナダユキさん、音楽に椎名林檎さん、主演に土屋アンナ さん と、勢いのある女性たちが集結。


吉原・玉菊屋。
女の様々な思惑が渦巻く、狭い世界。
びいどろの中でしか生きられぬ金魚のように
遊女たちもまた、遊郭の中でしか生きられない。
そこに売られてきた破天荒な少女を通して
遊女たちの悲哀や強さ、艶やかさ、を描く。
そして、近すぎて見えなかった愛に気づき、後ろ盾を離れ、自分たちの足で歩き始める。


極彩色の画、蜷川実花さんらしい。
朱赤を基調としながら、さまざまな色彩がちりばめられ
女性たちの肌を美しく見せる。
嫌われ松子の一生』のような現実離れしたポップさではなく
リアル感のあるポップさがある。


椎名林檎嬢のねじれたような曲たちは
すごく本作に合っているし、今の音楽シーンでは彼女が最適なんだけれど、
『百色眼鏡』*1を既に観ている私としては順当すぎて新鮮さがなかった。
じゃあ、誰がいいかって?
女性にこだわらなければ、彼女以外に思いつくけど、
今作は女性でなければならなかったはずだから、やっぱり林檎嬢なのだけれど。


海外の血が入っている土屋アンナさんが花魁っておもしろい。
漫画が原作のものは、これぐらいのキャスティングがいい。
彼女ぐらいのキャラでないと、ただの湿っぽい物語になってしまう。
でも、眉毛はもちっと太いほうがいいと思う・・・こわいぞ。
先輩花魁を演じた菅野美穂さん、妖艶。
菅野さんは清純な役も、意地悪な役も、妖しい役もできてすごい。


その他にも、「芸能人の無駄使い」的にさまざまな人が出ている。
しかも、1秒無いぐらいのカットとかでワンサカ!!
大好きな大森南朋さんもほんの一瞬出てて、それはそれで嬉しいのだけど(笑)


終盤の桜並木と菜の花の風景、圧巻。


インビジブル・ウェーブ

 監督:ペンエーグ・ラッタナルアーン (タイ)


スタッフ、キャストともに国際色豊か。
撮影は、『2046』のクリストファー・ドイル
出演は、日本から浅野忠信光石研
韓国からカン・ヘジョン、 香港からエリック・ツァン


香港とプーケット島を舞台に、日本語・タイ語・広東語・英語が飛び交うロードムービー
愛する人をボスの命令で殺めてしまった、料理人のキョウジは
プーケット島へ逃亡する途中に出会った女性・ノイとその赤ちゃんに癒されるが、
知らないところで様々な思惑がうごめき、巻き込まれていくキョウジ。
罪の意識に苛まれる彼の心は救われるのだろうか・・・。


浅野さんと光石さん、さすがの存在感。
カン・ヘジョン、かわいい。でも、もっと効果的な使い方してほしかったなぁ。
飄々とした、エリック・ツァンの存在は中立的。


クリストファー・ドイルの独特なアングルは
浮遊感というよりも、地に足がつかず、見えない波に翻弄されるようなストーリーを効果的に表している。
『2046』でもそうだったのだけど、なんでここをこんなに長く撮るのか判らない、という場面があった。
今回もそう。
閉塞感を助長させるようにするためだったのかな。
実際、自分の周りの空気が薄くなったような感覚になったから。


見えない波に翻弄されていた彼は最後、しっかりと波を掴み、地に足をつける。


この映画は、良いとか悪いとか、お勧めとかつまらないとか云えない作品。


眉山

 監督:犬童一心


さだまさしさん原作の物語。


メゾン・ド・ヒミコ」(犬堂監督)がめちゃよかったのと、
久しぶりにスクリーンの宮本信子さんを見たかったのでした。


出生に秘密がある娘とその母の物語。
そういう風に書くと、下世話な感じだけど
物語に凛とした雰囲気が常に流れていて、涼やか。


物語的に奇抜さや珍しさはないのだけど、
人物の設定や役者の演技、画の撮りかたなどが相まって心をゆさぶる。


宮本さん演じる、母・龍子のタンカの切り方や表情・所作が粋でかっこいい!!
それでいて、奥ゆかしさの中にある色気も兼ね備えていて、まさしく「イイ女」。


ドラマでしか松嶋菜々子さんの演技をみたことなかったけど
深田恭子さん同様に、映画のほうが断然いい。
ドラマではちょっと演技に違和感を感じていたので・・・。


徳島・阿波踊りのシーンは圧巻。
実際に見に行きたくなる。
女踊りは深く被った笠と手先の表情が日本的であり、美しい。
かつ、色もある。


宮本さんや松嶋さんの着物も、画に生えていて、
これから命の灯が消えようとしている母の覚悟と潔さを“白”で、
守り続けた娘が立派な大人になったことを“草色”で表現しているよう。


献体を希望した母の最期のメッセージ。
いま思いだしても目頭が熱くなる。

*1:林檎嬢の曲をイメージした短編映画